僕はただゲームする

【漫画】累の紹介と感想。演劇に魅せられた醜女が美女の顔を奪いスターになるサイコスリラー


ふとした時に思い出して読み返したくなる、そんな漫画って誰にでもあると思います。

 

松浦だるまさんの『累』は私にとってそんな作品の一つ。

 

累は2013年から18年までイブニングで連載され、17年には映画化もされた松浦さんの連載デビュー作。

 

壮絶な演技力が評価された美しい母から受け継いだ真っ赤な口紅には、キスした相手と顔を入れ替える特別な力がありました。

母とは似ても似つかない、思わず顔を背けられるような醜い顔の娘・累はその口紅を使い、華やかな演劇の舞台で活躍するお話です。

 もし自分じゃない別人の顔で生きてみたらどんななのかしら、とは多くの人が考えたことがあると思います。

 

私は演劇の門外漢ですが、非常に楽しめました。

 

劣等感、絶望、憎しみ、それらをそのまま鍋に叩き込んで煮詰めたらこんな作品ができあがるんだなって。

 

登場人物たちの行き過ぎた思惑が絡み合って緊張感のある流れが展開されるのは、早く次のベージ・巻に進めたい欲求に駆られます。

 

最後は自分の劣等感と向き合い、過去に顔を奪った先輩とともに自分の本当の顔で舞台に立ちます。

 

そういう訳で現代日本の派手な魔法を使うわけじゃないけど、心を揺さぶる作品が読みたい人にうってつけのこちらの作品をご案内。

 

【目次】

 

累のあらすじと紹介

累はヒキガエルの呪いでも掛けられたかのような顔をして生まれます。

 

母は絶世の美女でした。

誰もが認める演劇のスター・淵透世なのに誰に言っても認められません。むしろそれを言うことで嘲笑され、幼い頃からいじめられて生きてきました。

 

小学校の演劇会にていじめの一環としてヒロインに推薦された累はそれでも母を追い、懸命に練習します。

まぁ、クラスメイトは本気で劇に出すつもりはなかったみたいですし、笑いものにするつもりだったのですが。

 

劇の本番、いじめっ子とのいさかいの最中、母の口紅をつけた累は初めて美しい他人の顔を奪い、見事な演技で劇を成功させるのです。

 

そして高校でも美しい先輩の顔を奪い、同じく劇に出てその才能を発揮します。

 

そんな累の前に現れたのが母の友人・羽生田欣吾でした。

 

彼は前から累が疑問に思っていたことに答えます。

母も他人から綺麗な顔を奪い、演劇の舞台で活躍していたのだと。

 

それから累は睡眠障害ゆえに安定して舞台に立てない丹沢ニナと契約し、代わりにニナとして華々しい舞台に上がることになりました。

 

事故で植物状態となった丹沢ニナ

透世と瓜二つの妹・野菊

透世から累を頼まれた羽生田

そして累を中心として物語は展開し、芸を磨く中で本当の自分とはなにか、美しさとはなにか、重ねの秘密を暴こうとする人間たちとの攻防が描かれます。

 

 

 

累の感想

ホントたまに読み返したくなります。

 

昭和の劇画感のある作画がとても綺麗なのに懐かしさがすごい。

手塚治虫的な。

作者が美大出身なんでそのおかげでしょう。古臭い感じじゃなくてそういう絵柄って感じで。

 

私自身、自分じゃない誰かになってみたらっていうのはよく考えていたので、他人と顔を入れ替えるという累にはかなり共感を得ました。

 

かっこいい誰か、綺麗な誰か、なってみたくない?

 

入れ替わりものでは定番だけど、中身が違うと気づいた異性との恋愛とかいいですよね。

しかも、それ母娘2代でやってるんだから切ない。

どちらも成就しないのがなおさらです。

 

個人的には、

  • 自分の存在を奪われまいとする丹沢ニナとの争い
  • 姉・累の秘密を暴き陥れようとする妹・野菊との争い
  • 累の演技力に打ちのめされた先輩・幾との交流

この辺が見どころ。

 

特に高校の先輩である五十嵐幾との関係がいいなって。

 

この先輩は累が代役した劇を超えられなくて長い間ふさぎ込んでるんですよね。

それでも演劇を続けやっと掴んだ大舞台にてニナのあと今度は野菊と入れ替わった累と出会うわけです。

 

幾先輩は顔じゃなく中身、演技力の面で劣等感を得ており、美しさでコンプレックスを持つ累とは対象的な存在となってます。

 

だからこそでしょうか。

 

累の秘密を知ってもなお、それだけで累を遠ざけるようなことするでもなく、むしろ累を応援するのですよ。

幾先輩、天使だよホント

 

まぁ、累としてはコンプレックス刺激されまくって溜まったもんじゃないわけですが。

 

本編中でも出てくるけれど、登場人物たちがストーリーとは違った形で出会えていればと願わずにいられません。

どうしてこうこじれてしまったのか

 

とはいえ累自身も上場酌量の余地はあるとはいえ、倫理的にまずいこともやっちゃってます。

そこらへんをどう収めるのかなァと見守っていたんですが、ラストは納得の行く必罰でこれもまたヨシ、と。

 

まとめ

映画化はされたけれどもノイタミナとかでアニメ化もしてほしい。

シャフトとかユーフォータブルとかお願いします

 

いわゆる今の漫画風な展開がなく、物語読んだなァって感じで満足感が高いです。

その分読む体力使うけど、読了感が強い。

イノサンとか好きな人はこっちも好きかな?  と思う

 

『累』、超おすすめ。