【映画感想】スクール・オブ・ロックの評価・レビュー
おすすめ度 | ★★★★★ |
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ジャンル |
学園バンド |
タグ | 中年 ロック バンド |
【概要】 いつまでたっても大人になりきれないデューイはロックを愛する熱い男。生活費を稼ぐ必要に迫られた彼は、バイト気分で名門小学校の代用教員になる。ところがある日、ひょんなことから生徒たちの音楽的才能を発見。”授業”と偽って子供たちとロック・バンドを結成したデューイは、念願だったバンド・バトルへの出場を目指す!
監督 リチャード・リンクレイター |
いわゆる不良教師譚。
GTOやごくせんが好きな人は好きだと思う。
ロック・バンドをネタにした小ネタもあり、テンポもよく、全体的にまとまった音楽コメディー。
完成度というか安定度が高く、安心して笑えます。
【目次】
あらすじとかストーリー
冒頭でGTOやごくせん系の不良教師譚と書いたけど、たぶんあなたのイメージする感じそのまま。
普通の教師像からは逸脱した主人公が生徒の信頼を集め、最終的には周囲に認められるストーリー。
真面目にロックをやるが世界の支配者層たる”大物”に負け、自身の才能が認められることはなく、毎日場末の飲み屋でギターを掻き鳴らすも飲み屋の客は失笑するばかり。
バンドメンバーに苦笑され、曲の最後に客席に飛び込むモッシュするも避けられる始末。
私生活では元バンドメンバー・レッドの家に居候してるんだけど、うだつの上がらないバンドマンのデューイに払えるはずもなく数ヶ月滞納してる。
レッドは彼女に「早く追い出せ」と顔をしかめられ板挟み。
モッシュで痛めた体を引きずってバンド練習に来てみれば、自分が集めたバンドにも関わらず解雇・・・。
そんなデューイへホレス・グリーン学院から補充教員の電話が。
まぁ、レッド宛の電話だったんですが、報酬目当てにこれ幸いとなりすまして働きに出ることにします。
GTOやごくせんと違ってデューイ自身に教師として確固たる思いがあるわけでもないので、二日酔いかつ寝不足の状態で授業やったりする。
生徒たちも唖然ですよ。
音楽の授業に興味を惹かれて覗いてみると自分が望む楽器を弾ける生徒たちの姿が。
喜び勇んで生徒たちにロックを仕込んでいくわけです。
その後なんやかんや学院長ロズを酒でたらしこんだり、生徒を難病指定の子どもたちと偽ってバンド大会に出場させたりするわけですよ。
さあ明日はいよいよ本番だ、というところで保護者会に出席していたデューイが偽物教師だとバレてしまいます。
さてもうどうしようもない、とふて寝をしていたデューイのもとへ。。。。
とまぁ、最終的にはよかったね! の、終わりよければ全てよし! がこの映画です。
2時間の尺で綺麗にまとまっているし、ハッピーエンドなので後味もよいものでした。
デューイという男
ロックが大好き男。
だけど太ってて顔もよくない(目鼻立ちはきれいなので痩せれば悪くないと思う)。
一般常識の欠片もない本当にただただロックを愛し、それにひたすら打ち込む。
自分を排除する支配者たる”大物”に対して鬱屈した思いを持ってる、中二病的なルサンチマン。
なんで、前任教師が生徒たちに金☆と黒★でランキングつけてるのを見ると怒り沸騰して一覧表を破ってしまう。
だってそれこそは自分を評価しない”大物”たちの悪辣たる所業だから。
そんな彼にもいいところだってある。
・デューイは決してのけものを作らない。
バンドメンバーに選ばれた生徒たちに以外にもしっかりと役割を作り、クラス全員でバンド大会に望みます。
裏を返せばのけものはかつての自分だからなのだけど、生徒にとっては自分に任された役割を懸命に果たします。
・デューイは決して他人をけなさないし、いいところをしっかり褒める。
バンドメンバーの選出に対して、元々目をつけていたギター・ベース以外ではドラム・コーラスを希望選出にします。
コーラスはそれぞれ歌ってもらうのだけど、一人とても音痴な、もとい個性的な歌唱力を持った生徒も決してけなさない。
短気なデューイはぼろくそに言って否定しても良さそうなんだけど、絶対にしない。
オーディション前に「やっぱり歌えない。太ってて、きっとみんなに笑われる」という子にはその歌声がどんなに素晴らしいか訴えると、その子も笑顔でやる気に。
結局デューイの根本的なところには現代の評価教育で弾かれた過去の自分とそれを強いた社会への反抗がある気がします。
本人もけっこう問題あるのはその通りなのだけど。
デューイと学院長ロズ
ロズはもうデューイにとって”大物”そのもの。
責任と権威ある学院長の職に付き、ルールに従って学院を運営する女。
学院の先生方からも堅物と見られる彼女は学院の先生から外へ遊びに誘われたこともなく、「自分は嫌われている」と主張する。
この映画のチョロイン。
もとは柔軟で面白い(自称)かったロズは学院長の立場で保護者たちから糾弾されることで今のような堅物の”大物”になってしまった可愛そうな人。
作中、デューイの生徒から「大物ですね」と声をかけられ笑われるけども、大人の立場から見ると致し方無いというか同情せざるを得ないなぁと思う。
彼女は立場による責任でがんじがらめになってる映画視聴者の感情移入先にもなってる立ち位置のキャラクターなんじゃないかな。
この映画でデューイの奔放さに救われる。
デューイと生徒たち
「デューイという男」でも書いたけど、デューイは決してのけものは作らず、けなさず、いいところは褒める。
そして「ロックで成功する」「大会の賞金が欲しい」という裏の目的があったにせよ、ロック大会に向けてクラスで頑張る。
これが生徒たちの心を惹きつけたことでしょう。
みんなで一丸となって打ち込むのは楽しいですからね。
一人の生徒が作った曲をことさらに褒め、みなで作り上げるようにする姿はそれを見ていた生徒たちにも彼の姿勢が伝わったんじゃないかな。
スクール・オブ・ロックのレビュー
ロックバンドのギターをクビになった冴えない自己中ロッカーが、ふとしたきっかけで小学校の先生になりすまし、そこの生徒たちにロックを教えて、いっしょにバンドコンテストに出るというお話。
ジャック・ブラックのあくの強さが際立っているが、優等生だった子供たちが、ロックという音楽を通じて生き生きしだす所とか。
偽物とわかったジャック・ブラックを、それでも先生として信頼する子供たちとか。なんだかんだ反対してたのに、自分の子供たちのステージを見て、盛り上がってしまう保護者たちとか。真面目なもの、お堅いもの、教育的なものに対してのほどよいカタルシスがあって。面白くて感動して。
本当にタイトル通りの作品。ふざけたコメディと言ってしまえばそうなんだけど、でもすばらしい作品!
米英にロックが根付く理由が分かる、なかなか完成度の高い音楽作品だ。華やかに愛を語るオペラや荘厳に人生を奏でるクラシックでもない、抑圧された感情を解き放って、言いたい事を遠慮なくぶつける。反抗の対象は強くて大きいモノであれば、社会、企業、大人、学校、慣習でも何でもいい。若者でも子供でも主張を歌にして叫べるロックこそ自由の国を象徴する音楽なのだと理解できる。
ストーリーは独り善がりのギター・ボーカリストが臨時教師として紛れ込んだ坊っちゃん小学校での生徒達とのロックを通じた心の交流を描いたもので洋画「天使にラブソングを」や邦画の「スウィングガールズ」に近い。主人公ジャック・ブラックの人を食った濃い目のロッカー教師と、それに負けない子供達の熱演と演奏、そして隠し味のマリンズ校長役のジョーン・キューザックのキュート振りが抜群に良かった。彼女はジョン・キューザックの実姉だが、綺麗な顔立ちを生かした堅物校長にはぴったりだ。日本の学校と大きく違うのは生徒が多様な人種で構成されている事で、アングロ、ラテン、東洋人、アイリッシュ、アフリカン等の子供達の得意を生かして編成されたバンド、それ以外の生徒もマネージャー、衣装、照明、警備等の適材適所で力を発揮していて、この辺の設定の巧さはさすがハリウッドだ。ジャックも子供達も元々演奏技術を持っていて、演奏は吹き替え無しの生の臨場感だし、台詞は最小限に抑えた小気味良い脚本、伝統校の重厚さとロックの雑然さを対比させたカットやジャックの熱血ロック指導のカメラ長回し等も工夫されていて愉しかった。
僅か3週間の課外授業が生徒達に与えた変化は計り知れない。知識を詰め込む前に人としての感受性や勇気等の「器」を広げる教育の大事さが良く判る。海外では有料個人レッスンが主流だが、日本には有り難いことに誰でも参加できる部活やクラブが学校にある。その事に改めて感謝すべきだろう。まさかジャック・ブラックに泣かされるとは意外だったが、王道を此処まで完璧にやられては拍手しかない。家族で楽しめる隠れた良作です。
まとめ
まぁ、そんな感じで。
はちゃめちゃな主人公が自分本位に周囲を振り回しつつ、ハッピーエンドなコメディーが見たいときにおすすめですよっと。
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