【レビュー】お金出しても読みたいおすすめオンラインノベル

インターネットというものが我が家にやってきた高校生時代。

そのちょっと前から小説というものに興味を持った私はネットの世界に転がっていた「オンラインノベル」を読み漁っていました。

学園ものからファンタジー、恋愛、オカルトが主なもの。

趣味で書かれたそれは商業作品とはまた違った味があって、私は昼も夜もなく読みふけっていました。

今だと投稿サイト、（主なとこで小説を読もうなど）になるんでしょうけど、その時は作者さんが個人でHPで持っていて、あの手この手で好みの小説を探し出す楽しみがありましたね。

オンライン小説専用の検索エンジンもありましたよ。昨今の流れからか管理者不在で閉鎖されていて悲しみ。ちなみに「Newvel」というんですが、ご存知の方いらっしゃいますか？笑

今回は私が青春時代を過ごしたオンラインノベルを少数ながらご紹介します。

懐かしむ要素が強いのはご容赦くださいませ

Step Beat

HP：Psychedelic Note（管理人：結城ともさん）

1997年を舞台にした大人の成長物語。”HAL"と”rai”は文字だけで交流するオンラインチャットで出会い、名前も住んでいるところも、年齢、性別すらも知らず友情を育みます。

97年といえばLineやTwitter、スマホなんてものはなくまだ携帯電話が白黒の時代じゃなかったでしょうか。ネットの交流といえばHPの掲示板やチャットが主でした。

今だと考えられないですね。

SEとして働く成田・瑞樹は同業が集まるチャットルームに顔を出しており、そこでたまたま”rai”と出合います。共通の趣味が映画と分かると翌日仕事にもかかわらず夜中まで盛り上がるのでした・・・。

というのが、物語の始まり。

チャットというのは同時間に集まった人たちと文字で会話するSNS。今だとLineのグループチャットが近いですね。それのだれでも参加できるオープン版といった感じ。

ネット上の仮名（ハンドルネーム）が相手を識別する名前です。

もともと他人と関わるのが苦手な瑞樹（HAL）は打てば響くようなテンポで返事が返ってくる”rai”と映画の話題で寝るのも忘れて会話に没頭。翌日の始業を超絶寝不足で迎えて心底後悔するのですが、すごくよく分かる！

Twitterのリプライで盛り上がるあの感じ。

その後、"rai”の実家から届いたイチゴをお裾分けして貰うのに初めて電話をすることになるのですが、携帯電話から聞こえてきた声に瑞樹は驚いて通話を切ってしまいます。

――携帯電話が発していた声が”女”の声だったから。

瑞樹は他人と関わりたがらないですが、過去の経験から女とは特にそうだった。それよりも自分と話が合う女がいなかったので、進んで関わることもなかった。

まぁ、作中で書かれますが、瑞樹はモテます。顔がいい、という設定ではなくて印象的な目をしてるんですね。性格もミステリアスなので、非常にモテます。

女にトラウマを持つ彼がひっきりなしに女から迫られたらどうなるか、推して知るべしなのですよ。

それで瑞樹は女と真夜中まで毎日話し込んでいた事実に気づいて愕然とするのですが・・・。

ここまで書くとなんか一時期流行った「男だと思っていたあいつが実は女で～」みたいな感じですが、ラブコメにはならないのでそういう系が苦手な方でも大丈夫。

ぶっちゃけ恋愛に発展はします。けど、上述の通りHALとraiの、また周りの人物を巻き込んだ日常劇が面白いです。

特にお気に入りのシーンがあって、とある喫茶店で瑞樹が社内の豊満レディ・ベティさんに口説かれているところにraiがやってきて、raiもまた上司か口説かれる、というシーン。

なんとか振りほどいて二人は店を出るのですが、

「バっっっカじゃないの!?　なにあれ！　なに人前で抱きつかれてデレデレしてんのよっ！」
　「誰がデレデレしたよ!?　お前こそ何手握られて困ってんだよ！　とっとと振り払えばいいだろうがっ！」
　「それはこっちのセリフでしょ!?　なんで抱きつかれたままでいるのよ！　すぐ振り払えばいいじゃない、恥ずかしいっ！」
　「無理矢理引き剥がして大騒ぎされる方が目立って恥ずかしいだろ！　ちゃんと考えてんだよっ！　手も振りほどけないような奴に言われたくねーよ！」

引用：Step Beat　36話「なかったことにして」

とこんな感じで口喧嘩が始まってしまいます。

ようやく収まったころ店員さんに諭されたら、後ろにはそれぞれの知り合いがいて一気にクールダウン。

怒りもその原因も忘れた二人は仲良くロッテリアに繰り出す、というお話。

大人の恋愛小説のはずなのに、小学生かお前ら？！　と言いたくなるようなじゃれ合いが心地いい。

ある部分で大人になり切れなかった二人の成長をテーマにした恋愛物語。

男でも女でも、性別を問わずこんな友達がいたらいいなあって心から思える小説作品です。